止まらない、観光産業の「持続不可能な」成長

この記事の著者

法政大学グローバル教養学部(GIS)

John MELVIN(ジョン・メルヴィン)

英国エディンバラ出身。長年にわたり歴史と文化、それらが観光産業に与える影響に関心を持つ。日本で7年間教べんを執った後、エディンバラネピア大学で観光マーケティングの理学修士号を、ノッティンガム大学でビジネスマネジメントの博士号を取得。専門はマーケティング、観光マネジメント、イベントマネジメント、ヘリテージツーリズム。GISではManagement Science系の観光とマーケティングに関する授業を多数担当している。

Faculty of Global and Interdisciplinary Studies Associate Professor

John MELVIN

Growing up in Edinburgh, Dr Melvin has had a longstanding interest in history and culture, and how they impact on tourism. After teaching in Japan for 7 years, he completed an MSc in Tourism Marketing at Edinburgh Napier University, followed by a PhD in Business Management at Nottingham University. His research interests are in marketing, tourism management, event management and heritage tourism. Here at GIS he teaches various tourism- and marketing-based courses within the Management Science stream.

2014年から観光関連の授業を担当していますが、ここ数年、良くも悪くもメディアで観光に関する話題が増えました。世界的にも、旅行費用の低下、富の増大、ソーシャルメディアの影響を背景に、旅行者の数は増え続けています。これは、経済成長の促進、人権尊重精神の醸成、異文化間理解の向上を目標に1975年に設立された国連世界観光機関(UNWTO)の長年の願いでした。

雇用創出、税収増、GDPへのプラス効果が期待されるため、各国政府は観光産業の成長をおおむね歓迎してきました。日本も同様で、訪日外国人旅行者数が過去最高を記録し、地域経済に大きな利益をもたらす中、観光の奨励・促進に注力しています。その一方で、外国人旅行者が大幅に増え、観光が地域住民と環境に与える負の影響も知られるようになってきました。2017年には「オーバーツーリズム」という語も登場して、政府と企業には責任ある観光産業のマネジメントが求められています。

GISで観光を学ぶ学生は、そうしたトレンドを異なる角度から考えます。GISでは学際的なアプローチを取っているため、学生たちは異なる視点を持ち、より深く事象を理解することができるのです。私も授業でたびたび持続可能性を取り上げますが、観光産業のわずか数十年の急速な発展を考えれば、オーバーツーリズムが喫緊の課題となるのもうなずけます。それは統計でも明らかで、1950〜2017年の間に世界の人口が75億3000万人(約150%増)増えたのに対して、国際観光客到着数は13億2000万人以上(約5200%増)増えています。また、2015年に30億人を超えた世界のミドルクラス人口の大多数は、中国やインドなどの新興国が占めています。かつてない規模とスピードで成長した観光産業は大きく様変わりし、マネジメントやマーケティングに関わる組織は、さまざまな課題に直面しています。

観光産業のトレンドと力学に加え、「デスティネーション(観光地)マーケティング」の破壊的トレンドとなっているのが、ソーシャルメディアです。休暇の計画では、公式な情報源よりも、個人の発信する情報が頼りにされています。ソーシャルメディアには、膨大な情報の提供に加えて、無名の土地を有名にするという大きな役割もあり、人々はツイッターやインスタグラムで(特にジオタグ※を通じて)、これまで知られていなかった場所を「発見」するのです。しかしこれは、旅行者と地域住民の双方に負の影響をもたらします。誰もが住民の生活の質に配慮するとは限らないため、地域社会と環境は著しく破壊される可能性があります。混雑のせいで、その土地の雰囲気が損なわれる、地域住民が旅行者に複雑な感情を抱く(極端な場合には攻撃的な態度を取る)ようになれば、旅先での体験の質にも影響します。負の影響は長年の課題ですが、ソーシャルメディアはときに状況を悪化させ、結果的に、現在の観光産業の成長が「持続不可能」であることを露呈するのです。

残念ながら、大半の政府と観光関連組織は、長年、成長重視で観光を推進し、今も観光客を増やそうと躍起で、中長期的な影響をあまり考えていません。しかし、負の影響を考えるなら、そこに批判の目を向けるだけでなく、わが身を振り返るべきです。オーバーツーリズムの原因は、消費者、つまり私たちの旅行熱にあるのですから。フィンランドの作家のHenrik Tikkanenは、こう述べています。「私たちは将来世代のことを何も考えていない。それゆえ将来世代は私たちのことを決して忘れないだろう」。将来世代のために、各国政府は旅行者が好き勝手に世界を旅できないよう厳しく規制せざるを得ないでしょう。ただ、旅行者にとって幸いなことに、政府の動きは鈍いままのようです。
※ジオタグ:写真データなどに追加される緯度・経度の情報

この記事は法政大学様の記事を転載したものです。
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