新型コロナウイルスで加速する『国内回帰』や『脱中国』の動き

新型コロナウイルスの感染拡大でサプライチェーンの脆弱性が顕在化し、世界各地で生産拠点の「国内回帰」や「脱中国」の動きが強まった。


フランス政府は5月26日に自動車産業に対し、約80億ユーロ(約9,500億円)の経済支援を行うと表明した。支援の条件として生産拠点を国内に戻すことなどを求めている。韓国政府は6月1日に、生産拠点を国内に回帰させる企業への税制支援の認定条件を大幅に緩和すると発表した。また、米国では国内企業の「脱中国」を促す税制優遇措置や補助金制度を含めた法案の準備が進められている。さらに、トランプ米大統領は海外で生産活動を行う米国企業に対し、新たに課税をする可能性があるとまで述べた。


日本においてもサプライチェーン対策が既に実施されている。


政府は2020年度第1次補正予算に国内回帰、ASEANなど第3国への生産拠点の多元化を促す補助金として2,435億円を盛り込んだ。その第1弾として国内回帰する57件(約574億円)の事業が採択されたことが7月17日に明らかになった[1]。採択事業57件のうち、医薬品、検査キット、医療用マスク・防護服など医療関連製品製造事業は計27件と半数近くを占めた。これら事業の生産拠点の国内回帰によって、今回の新型コロナウイルスによる混乱でみられたグローバルロジスティックが機能しなくなってしまうような非常時においても、国民が健康な生活を営む上で重要な製品が円滑に供給されることが期待できる。


また、自動車用部品や自動車用金型など、生産拠点の集中度が高い製品・部素材製造を行う事業も今回の支援先となった。このような事業の国内回帰の動きにより、海外の生産ラインがストップしてしまう場合でもサプライチェーンが寸断されずに済むのだ。


さらに、JETRO海外サプライチェーン多元化等支援事業では、ASEANなど第3国に生産拠点の多元化を図る30件の事業への支援も決定された[2]。そのうち中国からの移転先をベトナムとした事業は15件と最多。次いで、タイ(6件)、マレーシア(4件)、フィリピン(3件)が続いた。医療関連製品製造のほかに、自動車部品や半導体製造を行う事業が採択された。


このように、度々注目されてきた日本企業の「国内回帰」だが、その動きは今回のパンデミックによって加速しそうだ。そうはいっても、今回の補助金の申請数は90件と約11,000社の製造業の現地法人数(2018年度末時点)[3]のうちの約0.8%にとどまり、多くはないように感じる。その背景として、日本の比較的高い人件費・地価などのコスト面や人手不足などといった懸念材料により、多くの企業で国内回帰に対して慎重な姿勢を崩せないでいるとも考えられる。


サプライチェーンの脆弱性の顕在化リスクが高まっているいま、政府や行政の多角的な支援がますます求められている。


[1]経済産業省ニュースリリース「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金の先行審査分採択事業が決定されました」(2020年7月17日)https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200717005/20200717005.html

[2]経済産業省ニュースリリース「海外サプライチェーン多元化等支援事業の一次公募採択事業が決定されました」(2020年7月17日)https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200717007/20200717007.html

[3] 経済産業省「第49回海外事業活動基本調査」https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200527002/20200527002-1.pdf

この記事は帝国データバンク様の記事を転載したものです。
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この記事を書いた人

帝国データバンク

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株式会社帝国データバンク(ていこくデータバンク、英: Teikoku Databank, Ltd.、略称: TDB)は、企業を専門対象とする日本国内最大手の信用調査会社である。1900年3月3日に後藤武夫が帝国興信社として創業、その後法人化し商号を帝国興信所とした。1981年に社名を現在の帝国データバンクに変更。それと同時に従来請け負ってきた結婚調査・雇用調査等の個人調査を廃し、業務を企業信用調査に特化した。本社は東京都港区。