見せかけでない本質的なサスティナブル経営がここにある

世界シェア70%の化粧用スポンジ製造メーカーである雪ヶ谷工業株式会社。クライアントは名だたるグローバルな化粧品メーカー。まだサスティナブル経営に関して認知度が低かった2019年、サスティナブル経営に向けて一気に舵を切り、中小企業でありながらSDGsに関連した最も先端的な取り組みを行う企業として行政機関からも注目される存在に。昨今のSDGsのトレンドに先駆けて取り組んだ経営改革に、本質的なサスティナブル経営を見た。

会社概要】
雪ヶ谷化学工業株式会社(https://www.yukilon.co.jp/
東京都品川区東大井5丁目12番10号 大井朝陽ビル6F
設立1952年11月7日
資本金 1,000万円
スポンジ・各種発泡体製造、化粧用スポンジを主力とした石油化学メーカー。化粧用スポンジは世界シェア70%を超える。

ゲスト

坂本 昇 様
雪ヶ谷化学工業株式会社 代表取締役社長

サスティナブル経営にシフト

2019年坂本社長はある経営研究会で講師のコンサルタントから、これからは「社会課題解決型製品」を開発すべきだという話を耳にした。「社会課題解決型製品」とはなにかを模索する中で、これまでの製品開発からの大転換に行き着くことになる。

雪ヶ谷工業株式会社は世界シェア70%を誇る化粧品スポンジを製造している。その化粧品スポンジは1970年代に石油原料の樹脂から生み出された製品だ。天然ゴム入りの化粧スポンジは天然ゴム由来のアレルギー物質によって、アレルギーを引き起こす場合があった。石油原料の樹脂の合成ゴムを開発した結果、アレルギーを引き起こさない化粧品スポンジが生まれた。その合成ゴムスポンジは瞬く間に化粧品業界に広まり、化粧用スポンジで世界シェア70%のトップシェアを獲得するに至った。

「社会課題解決型製品」を考えた時、そのような盤石な経営基盤となる製品に関してメスを入れる事となる。
合成ゴムの原料となる石油原料の樹脂の使用は、生産過程で膨大なCO2を発生させる。自社の製品はサスティナブルではない。ただこの世界シェア70%の製品をサスティナブルな製品に変えることにより、CO2排出削減に貢献できるのではないか。

実は、合成ゴムスポンジ誕生の要因であった天然ゴムのアレルギー物質除去はすでに自社では克服する技術を開発し、特許も取得していたが、製造コストを抑えるために製品の製造には活用していなかった。
天然ゴム入りの化粧品スポンジ製作は可能だ、ただそれだけで社会課題解決型製品と言えるのか、坂本社長は天然ゴム自体の生産状況にも目を向けた。天然ゴムは東南アジアの熱帯雨林が主な産地だが、果たして自社の仕入れる天然ゴムは、フェアトレードによるものなのか。フェアトレードを確認するために自社スタッフを生産地に向かわせた。
天然ゴムのフェアトレードは証明されたが、現状天然ゴムのフェアトレードを証明するような機関はない。であれば自社でフェアトレードであることの認証マークを作ろう。
こうして、石油由来の樹脂の使用を抑え、フェアトレードの天然ゴムを使用した化粧スポンジが誕生する。

サスティナブル経営を広める

CO2を削減し、フェアトレードにより天然ゴム生産地の貧困問題の解決にも繋がる製品を広める事自体が社会課題解決に繋がる、坂本社長は明確な信念を持ってサスティナブル化粧スポンジを推し進めていく。

ただ予想外の壁が立ちはだかる。クライアントである名だたる化粧品メーカーの購買部門の反応は坂本社長の期待を下回った。各社のHPではSDGsの取り組み目標を掲げ、SDGsを推進していくことを説いているが、資材調達の現場にはその方針は下りてきていないようだ。資材調達の現場のニーズは、これまでと同じく良いものをより安く、これが現状だ。

これまでの御用聞き営業ではだめだ。製品を売るのではなく社会課題を共に解決する仲間として一緒に活動するために、社会課題が解決される製品を導入すべき、と説いた。

この製品を採用することで、社会課題の解決に関心が高いと訴求できる、化粧品メーカーは徐々に動き始めた。

社員も変わった。当初サスティナブル経営を社内で説いた時、社員の多くは困惑した。茶化すものもいた。ただSDGsが世間で注目されメディアでも多数取り上げられるようになってくると、社員たちは自分たちが取り組んでいることがSDGsの活動そのものであることに気づいた。今では社員が率先して、SDGs推進のための目標を設定し、実行のための企画をたて自発的に取り組んでいる。

坂本社長は言う。
全ての経済行為は価値の交換である。ただここ2〜3年でコロナ禍とあいまって価値観は大幅に変わった。安価で良いものよりサスティナブルが優先する価値観に変貌した。サスティナブルでなければ価値のない世界になったのだ。会社と従業員とクライアントと社会との関係。これら全てにサスティナブルという価値がなければ成り立たない社会になった。

この価値観の変貌を、自社の製品、活動を通して関係する全ての人に伝え、社会課題を共に解決する仲間として進んでいかなければならない。それが新しい価値の交換であり、誰一人取り残さないSDGsの価値観である。

雪ヶ谷化学工業株式会社のSDGsアクション ⇒ https://www.yukilon.co.jp/sdgs/

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